排水トラップと水流のイメージ(概念図)

排水設備における感染リスクをどう捉えるべきか

見えない内部リスクと向き合うための考え方

問題の整理

院内感染対策においては、手指衛生や環境表面の清掃が重視され、
多くの医療施設で高い水準の運用が行われています。

しかし、十分な対策が講じられているにもかかわらず、
特定の設備や場所を起点として、感染リスクが繰り返し指摘されるケースも存在します。

その背景には、日常的な清掃や点検だけでは把握しにくい、
設備内部の状態が関係しています。

従来対策の限界

排水設備に対しては、定期的な清掃や薬剤による洗浄・消毒といった対策が行われてきました。
これらは衛生管理において不可欠な取り組みです。

ただし、これらの対策は主に一時的な除去を目的としたものであり、
排水設備の内部構造そのものが変わらない限り、再発の条件が残る場合があります。

視点を変えるポイント

  • 表面の清潔さではなく、内部環境の状態を見る
  • 除去ではなく、形成されにくい条件を考える
  • 事後対応ではなく、起点を管理する

排水設備は水が流れることで安全に見えますが、
実際には水が滞留する時間や構造が存在します。

排水トラップ(サイフォン)への着目

排水トラップは臭気や害虫を防ぐために不可欠な構造ですが、
内部に水が滞留する設計となっています。

この滞留構造は、バイオフィルムが形成・定着しやすい条件を生みやすく、
再発リスクを考える上で重要なポイントとなります。

解決の方向性

排水設備における感染リスクを抑えるためには、
清掃や消毒に加えて、それらが機能しやすい環境を構造的に整える視点が重要です。

排水設備は、適切な視点と設計思想によって、
予防的にコントロール可能な領域として捉えることができます。

筆者について

本コラムは、医療施設における院内感染対策を、
設備・構造の観点から整理することを目的として作成しています。