改修・建設現場で使われる実務向け図面イメージ

日本の改修・建設現場でDWGが今も主流なのか - 点群やBIMが必須とは限らない理由

近年、建設・改修分野では3Dスキャンや点群処理、BIMといった技術が注目されています。
一方で、日本の実務現場では、今なおDWG形式の図面が中心的な役割を担っています。
本コラムでは、DWGが使われ続ける理由と、点群やBIMが常に最適解とは限らない背景を、実務フローの観点から整理します。

本質的な論点は「何が測れるか」ではなく、
次工程でそのまま使える成果物として整理できるかという点にあります。

DWGは思想ではなく、実務上の共通言語

日本でDWGが使われ続けている背景には、保守性や慣習だけではない実務的な理由があります。 設計・施工・製造の各工程で共通して扱いやすく、協力会社や現場間での受け渡しも比較的安定しているためです。

  • 設計と施工の間で共通して扱える
  • 外部協力会社や複数拠点で共有しやすい
  • 表現ルールが確立しており、解釈のズレが起きにくい

つまりDWGは「選ばれている」というより、実務を回す上で最も安定している形式として使われているケースが多いと言えます。

改修現場で測定結果をDWG図面と簡易モデルとして整理した実務例
改修現場での測定結果を、次工程で使えるDWG図面として整理した例

点群・3Dスキャンへの慎重な姿勢は、技術ではなく運用の問題

点群や3Dスキャンは有効な技術ですが、日本の現場では慎重に扱われる傾向があります。 理由の一つは、取得データの量と処理負荷です。フルスキャンのデータは可視化には優れますが、 次工程で「どこまでを図面に落とし込むか」という判断と運用設計が必要になります。

  • データ処理が属人化しやすい
  • 成果物の品質基準が曖昧になりやすい
  • 図面化までの工数と納期が読みにくい

重要なのは技術の優劣ではなく、現場と後工程が無理なく回る形に落とし込めるかです。

点群がオーバースペックになる場面

改修や設備更新、現況把握を目的とした案件では、必ずしも空間全体の完全な3Dデータが必要とは限りません。 多くのケースで求められるのは、「次工程で必要な寸法が揃っていること」「使える形で整理されていること」です。

測れることよりも、描けること(成果物として成立すること)が重視される場面は少なくありません。

スピードだけでは評価されにくい

海外では「短時間で納品できる」ことが強調されることがありますが、日本では必ずしも決定要因になりません。 むしろ重視されるのは、修正や手戻りが少なく、社内・協力会社で再利用しやすく、業務フローに無理なく組み込めることです。

結果として、バックオフィスや後工程の負荷を減らせるかどうかが、実務上の評価軸になりやすいと言えます。

手作業の採寸も、正しく整理すればデジタル

手作業による採寸は、決して旧来の方法ではありません。現場経験に基づく判断や、空間の癖を読み取る力は、今も重要な価値です。 課題は採寸そのものではなく、その情報がどのように図面として整理され、次工程に渡されているかにあります。

採寸者の判断を尊重しつつ、記録の揺れを減らし、図面化を前提とした整理を行うことで、実務としての安定性が高まります。

成果物起点で考える測定プロセス

すべてを測ってから考えるのではなく、「どの図面が最終成果物か」を先に定義することで、測定内容は自然に絞られます。 この考え方により、不要なデータ取得を避け、図面化の負荷を抑え、次工程での解釈ズレを減らすことが期待できます。

  • 成果物(図面)の定義を先に決める
  • 必要な要素と基準線を明確にする
  • 表現ルールと受入れ基準を揃える

まとめ

日本の改修・建設現場では、「高度な技術を使うこと」よりも「実務として無理なく回ること」が重視されます。 DWG、手作業の採寸、限定的なデジタル化は、必ずしも過渡期ではなく、合理的な選択として成立しています。

DXの成否は、測定技術そのものよりも、
測定後工程をどこまで実務フローとして設計できているかによって左右されます。

関連する論点として、改修現場で「測定後の図面」がなぜ重要になるのか、また業務フローとしてどこを設計すべきかについては、 以下のページでも整理しています。

筆者について

I.J.ビジネス道社は、日本企業向けにイスラエル発技術との協業検討を実務ベースで支援しています。
本コラムは特定製品の紹介を目的とするものではなく、現場で起きやすい論点の整理として作成しています。

もし社内で「測定後工程の標準化」や「成果物の品質・運用設計」が論点になっている場合は、 お問い合わせフォームよりご相談いただければ、状況に合わせて整理のお手伝いをいたします。