RAGとメモリ集約型AIワークロード

RAGワークロードが顕在化させる「メモリ設計」の重要性

Retrieval-Augmented Generation(RAG)は、大規模言語モデル(LLM)に外部知識を組み合わせる手法として、 企業システムや業務アプリケーションでの採用が進んでいます。

一方で、RAGはAIインフラにおけるメモリ設計の重要性を強く意識させるワークロードでもあります。

RAGが要求する2種類のメモリ

RAGでは、短期的に高速アクセスが求められるメモリと、 大量の情報を保持・検索するためのメモリの両方が関与します。

  • 短期メモリ(STM):コンテキストウィンドウやKVキャッシュ
  • 長期メモリ(LTM):ドキュメント、埋め込み、ベクトルデータ

これらは性質が異なるため、同一の前提で扱うと非効率が生じやすくなります。

なぜRAGはメモリ集約型になりやすいのか

RAGでは、取得する文書数や埋め込みのサイズが増えるほど、 メモリ帯域やレイテンシへの要求が高まります。

メモリが十分に供給されない場合、GPUやアクセラレータは データ待ち状態となり、演算資源が有効活用されないケースも見られます。

インフラ設計への示唆

RAGは、単にモデルやソフトウェアの問題ではなく、 インフラ設計の前提がワークロードに適合しているかを問い直します。

  • 必要な場所にメモリを供給できているか
  • メモリ容量と帯域を独立して検討できているか
  • ピーク前提の設計になっていないか

おわりに

RAGは、生成AIの活用を広げる一方で、従来のインフラ設計の前提に課題を投げかけています。
メモリをどのように扱うかという設計思想は、今後のAIシステム全体の効率や拡張性に大きく影響します。

ここまでのコラムでは、AI/HPCにおけるメモリ設計の論点を段階的に整理してきました。 次は、これらの流れを踏まえた実装アプローチについて整理していきます。

筆者について

I.J.ビジネス道社は、日本企業向けにイスラエル発技術との協業検討を実務ベースで支援しています。
本コラムは特定製品の紹介を目的とするものではなく、AIインフラ検討における論点整理として作成しています。

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